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第33回 企業訪問 ㈱森のエネルギー研究所




「みっちゃん&エイミーが行く!」こちらはEB+事務局みっちゃん&エイミーが会員企業へ訪問インタビューをし、その企業の特徴や魅力をご紹介するコーナーです。


株式会社森のエネルギー研究所

森林資源を活用し木質バイオマスエネルギー利用に特化したコンサルティング企業として、2001年10月8日の木の日に設立しました。現在は全国の自治体にむけた政策支援、民間企業へ資源利用の事業化サポート、官公庁への政策提言や調査を行っています。

この度、2021年6月に環境省補助金「ZEB実現に向けた先進的エネルギー建物実証事業」の採択を受け多摩地域では初の「木造ZEB」の新オフィスが完成したとお聞きし理事の大島様と一緒に見学して参りました。

場所は東京都青梅市。地域の多摩産材を活用したZEB事務所として、空調、照明、電力、熱利用など、全てのエネルギーを自社で賄う再生可能エネルギー利用の最先端オフィスなのです。

株式会社森のエネルギー研究所

それでは早速インタビュー開始です。ご対応下さったのは取締役の菅野様、業務推進役の蒲生様、当会会員でいらっしゃるコンサルタントの井馬様です。


みっちゃん:こちらはどんなオフィスですか?


菅野様:新オフィスが昨年の3月に完成して約1年半になります。CO2をオフする『ZEB』住宅です。

弊社は木質バイオマスをボイラー熱利用する事業を行っております。温浴施設様や、これまで灯油、ガス、重油とか燃やしていた企業様に木質バイオマスで経費削減とCO2削減をご提案する会社です。

燃料で使うほかに、実際に柱や板に使いつつ木を燃やして薪ストーブなどを活用し、エネルギーとして活用する流れを作ることで、これだけ脱炭素と言われる中でCO2ゼロの建物をきちんと木造で断熱しっかりやり、そしてそんなに高くなく、その先駆けとなるものを作ろうとしました。今回社長の指示もあり、このような社屋を建てた経緯がございます。このCO2削減の建物は国内ではまだ事例が少ないです。


よくZEHと呼ばれるCO2ゼロの住宅は年間何万戸と建っていますが、「これがZEB」という事務所やホテルなど非住宅という建物の中では全くと言っていいほど数が少ないです。省エネをしっかりやって、断熱材しっかり入れて、出来れば太陽光とか蓄電池を併せてCO2削減の建物を作ってやって行こうという動きがありますが、まだまだ国内では少ないです。ZEBって呼ばれる建物の中でも、『ZEB』カギゼブと呼ばれる二重カッコ書きのZEBで100%以上の再エネ省エネを実現する基準でZEBの中でも最上級のランクですが、多くの場合は75%削減した「Nearly ZEB」という100%は難しいけれども再エネで一部賄って、省エネを50%達成するものか、ZEB Readyという50%以上省エネやっています。というものがありますが、しかしこれが全部ZEBっていう訳ではないです。

しかし、やるのだったら100%、通年で考えたら太陽光とか(もちろん雨が降った日は全て電力自給は難しいっていうのが結構ありますが)、年で考えたらCO2削減できるので、そして、我々の多摩地域の中で木材扱っているとこもあるのでこれを扱って行こうという事で作りました。


国内ではZEBで2000㎡以下の木造建物の事例が15例あります。木造で新築は事務所が多いのですが、木造という形にすると地域の工務店でも建てられます。お金かけてゼネコンとかでするより、地域の工務店で地域材使って自分たちでモデル化したいという事で、木造ZEBで二階建て以下の新築であれば太陽光を乗せればZEBになるという計算がだいたい出来ました。(関東とか太平洋側であれば)

そういう点から、地域材を使った木造オフィスのモデル化をしたのが今回の実例です。とはいえ高い金額じゃ誰もやらないと思いました。


当時オイルショックなどの前で極端に値が上がる直前くらいだったのですが、坪単価100万円に抑えるZEB工事というのがありました。この当時、坪単価100万円くらいと言うと少し高めの高級住宅街の単価としても太陽光と蓄電池込みで、断熱材も二重化や高品質高断熱のZEBが出来るモデルができました。それでだいたい6,500万円くらいです。

さらにZEBですと環境省の補助が1,200万円弱おりました。ここが全部で195㎡くらいですが坪単価100万円、補助金が1,200万円あるので坪単価80万円くらいの自己負担で出来ました。


これまでZEBをやっている企業様であまり坪単価を出している企業はありませんでした。坪単価100万円で補助金をうまく使えば坪単価80万円でこういったCO2削減のオフィスが出来ます。これくらいの負担だったら、どうせ事務所を新築するのだったら坪単価と金額をおさえて、どういったものが出来るかという想いで始めたのが経緯です。


太陽光は屋根のほぼ全面にのせています。敷地の関係上これしかのせられません。当社の一級建築士が中心になって図面を考え、ぎりぎりのスペースまで太陽光を設置しZEBを達成しました。

主に多摩産材を活用したかったのですがどうしても一部他の材も使用しています。どこにどんな材が使われているかどんな材が何立方使われているかと図面では計算されています。まず柱は二階がスギ、一階はヒノキを使用し、柱関係は多摩産材を使用しています。床はくぎ材ですが福島の南会津産。床材は防音も出来る良い材を使おうとのことで、密度が高く傷もつきにくいクリ材を使っています。あと梁は一部外国産材も使用していますが合板は北海道の津別のものを使っており、こんなかたちで多摩産材と国産材を使い分けています。

多摩産材と国産材を足し合わせると比率としてはおおむね木材としては36立方くらい全体で使っていますが、国産材は30立方くらい、多摩産のものが半分くらいです。8割が国産というイメージですね。

単体で一番お金がかかっているのが、社長がこだわったこのテーブルです。奥多摩の製材工場で作ってもらったもみの木を使ったテーブルです。みんなのフリースペースとして利用しています。

木の香りが心地よい明るいオフィスです。


井馬様:こういった設備の建物見たことありますか?


みっちゃん:ここまでこだわった建物は見たことないです。地元の多摩産材を使っているのがいいですね。


菅野様:これまでいろんな企業の方も見学にお見えになるのですが、先日いらしたある企業の方が坪単価100万円でこの機能とは自分の建てた家より安い!と驚いていらっしゃいました。

人によっては普通に建てた家よりZEBの方が安いと言われることもあります。木造の中でも地域の材を使ってこのようにZEBが出来るという事を証明しました。


みっちゃん:ZEBでこだわりのある方におすすめ出来ると良いですね。


菅野様:我々は設計事務所でもありますので工務店さんと連携し多摩地域でこういった木造の住宅だけでなくZEBを作っていく動きで出ています。


大島様:壁が結構厚いですよね。断熱材ですか?


菅野様:断熱材が二重になっているイメージです。外側の厚さは60ミリ、内側が75ミリです。あえて負荷断熱というかたちで、断熱材をカットしてはめています。木材の弱いところから放熱がありますがそれを防ぐようにしています。あとは入ってみてわかったのですが、非常に防音性能が良いです。この前は交通量多いですがあまり聞こえません。

みっちゃん:窓も特殊ですか?


菅野様:ペアガラスと言って、市販にもありますが中に間がありアルゴンガスが入っています。

エアコンは2階が1台のみで賄っています。断熱性が高いのですごく効きが良いです。冬の方が威力あります。断熱材があってパソコンとか人体の熱もちょっとありますが、例えばここ青梅は夏40℃冬マイナス8℃に届くかという日もあるのですが、その中でも冬場前日の夜にエアコンを20℃でつけていて、翌日の朝に15℃くらいまでしか下がっておらず、それだけ保温性能が良いことがありました。冬場の方が省エネ効果高いです。


蓄電池の入るボックス 
事務所目の前が青梅マラソンのスタート地点

【屋外へ】

菅野様:屋根は残念ながら見えませんが太陽光が乗っています。

こちらには鉛の蓄電池が入っています。

2階の窓にブラインドがありますが、太陽の角度に応じて自動にブラインドが日射を防ぐように動きます。南面で日差しがきついのですが、太陽の角度を感知した上で最低限の明かりだけ入れて太陽光が入らないようにしています。ドイツ製です。


大島様:ヨーロッパでは外で遮熱するのがありますよね。そういったものと同じですね。


菅野様:今回、みわ先生の監修が入って作りました。また、台風になると風が風速15m以上で自動的にブラインドが巻き上がります。


【1階の作業場】

菅野様:多摩産材にレーザー加工を使ってコースターなど作っています。注文に応じて作れます。地域のトマトやキウイなどの農産物を加工し、ドライフルーツを作ったりしている加工所です。こちらで販売もしています。

薪製造もしています。


青梅マラソンのスタート地点に位置します。私も10キロ走っています。


パワコンがここで太陽光発電の自動制御をしています。太陽光発電すると電気が使い切れないので自動で1階と2階の制御をかけています。これが能力を発揮すると春と秋とかで10kw行くのですが、制御かけています。


【ZEBの証書を拝見】

菅野様:これがZEBの認証を受けている証書みたいなもので、工事始まる前にきちんと削減出来ているという認証を受けました。省エネ+太陽光発電で102%削減出来ています。


みっちゃん:木の香りが気持ちいいですね。他の企業さんとの連携はどうですか?


菅野様:元々、社長の意向もありましてどうせやるならどこかの企業とコラボレーションしようという意図があり、青梅市内で組める事業者を探した時に、この「ちと」さんという会社さんがこれまで放課後デイサービスという障害をもった子供たちの居場所をつくるような事業をしていましたが、こちらが今度就労の場を作っていきたいということで、森エネの会社と組み、木工品の活用についても森エネから提案したり製品の作成をもちかけて、多摩産材で我々が知っている木材の加工業者を紹介しながら一緒に展開しています。これも始まったばかりで収益はまだこれからです。


井馬様:思いつかれることがあったら熱利用とか提案して下さい。


みっちゃん:以前作りたいと会の中で話していた会員企業の技術を集約した施設みたいですよね。


大島様:この事務所はおいくらですか?


菅野様:6200万円です。そのうち1200万弱は補助金です。補助金で断熱材とか窓以外にエアコンとかもZEBだと補助対象になります。太陽光はもちろんですが、窓とか断熱材とかエアコンとか必須なものが対象になります。土地もこの地域は安く、だいたい土地が2,000万円くらいです。


みっちゃん:近くに役所やいろいろ揃っているし、暮らすと便利なとこって感じですね。


井馬様:このあたりは歴史的にいうと新選組が有名です。


大島様:このあたりと言うと私は青梅マラソンしか思い浮かばないですね(笑)


みっちゃん:この裏は竹林でロケーションも良いですね。


井馬様:余剰電力の買取りを大島さんに相談しています。


みっちゃん:井馬さんはこちらでは主にどんな事をされているのですか?


井馬様:営業をしています。ここは遠いので毎日ではないですが出勤しています。


みっちゃん:何名位いらっしゃいますか?


井馬様:2階のスタッフは20名位います。


みっちゃん:こちらでお仕事されて良かったことはありますか。


井馬様:ひとりで家にいたら老けてしまいますが、働ける場があるのは嬉しいです。前の仕事の関係でバイオマス関連の仕事をしています。


太陽光の向きに対応するブラインド
断熱材は断熱率が高く高性能

井馬様を囲んで集合写真
地球のオブジェが目をひきます


【編集後記】


今回見学させて頂いた新社屋は「木ズナのもり」と呼ばれ、使用している木材に多摩産材を多く使用し、地元の木を地元で活用、社屋の1階には福祉作業所が入居し、木工品、薪、ドライフルーツなどを作成して、地域の人と自然と社会をつなげる事業展開をしていました。SDGsの取組みとしては、7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)、8(働きがいも経済成長も)、11(住みつづけられるまちづくりを)、13(気候変動に具体的な対策を)、15(陸の豊かさも守ろう)、17(パートナーシップで目標を達成しよう)を実現しています。

環境配慮だけではなく、地域連携や社会課題への取組みを具体的に建物に反映しており素晴らしいオフィスでした。

補助金も上手く活用し、坪単価を抑え、高価な投資でなくてもこのような木質オフィスを完成させたのは、先進企業としてこれからも益々注目されるでしょう。

そして、何と言っても、木の香りの居心地の良さは最高でした。



株式会社森のエネルギー研究所 概要

所在地:東京都青梅市東青梅4-3-1

延床面積:1F:98㎡ 2F:98㎡ 合計195㎡

構造:木造2階建て

竣工:2022年1月

建設費:約6,200万円

使用木材:・柱:スギ、ヒノキ(多摩産材)・建具:スギ(多摩産材)・床:クリ・テーブル:モミ(多摩産材)

木材使用量:36㎡ CO2固定量 28t-CO2

太陽光発電:出力11.9kw 年間電力量12.93MWh

蓄電池:鉛蓄電池(CFB:カーボンフォームバッテリー)容量26.4kwh

薪ストーブ:暖房用 熱出力8kw

ZEBランク:『ZEB』年間のエネルギー消費量が賞味ゼロ



井馬様、菅野様、ご貴重なお時間ありがとうございました。

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